犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)[2025.11.18]
■ どんな病気?
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、犬の免疫が自分の赤血球を誤って壊してしまう病気です。
急激に重い貧血を起こし、放置すると命に関わります。
赤血球が壊れると、酸素を全身へ運べなくなり、
「ぐったり」「呼吸が早い」「歯ぐきが白い」などの症状が出ます。
- 発症すると 約半数の犬が命を落とす可能性がある と報告されています。
- コッカー・スパニエル、プードル、レトリバーなどで多い傾向があります。
■ 主な症状
・急にぐったりする
・食欲がない
・白目や歯ぐきが黄色(黄疸)
・呼吸が速い、苦しそう
・お腹が痛そう、吐く
・尿が赤い/濃い茶色
・心拍数が多い
急激に進行するため、気づいたらすぐ受診が必要な病気です。
■ なぜ起こるの?
犬自身の免疫が赤血球を「敵」と間違えて攻撃することが原因です。
基礎疾患(感染症・腫瘍・薬剤反応など)が隠れていることもありますが、
多くは一次性です。
■ 診断はどうする?
IMHAが疑われたら、以下の検査を組み合わせて診断します。
血液検査
・重度の貧血
・赤血球が壊れた証拠(球状赤血球、ビリルビン増加)
・炎症の上昇
血液塗抹(顕微鏡検査)
赤血球が破壊されているサインを確認します。
凝集試験・クームス試験(直接抗グロブリン試験)
免疫が赤血球にくっついているかを確認。
※ステロイドを先に使うと診断が難しくなる場合があるため、
可能なら検査前に免疫抑制薬を投与しないことが推奨されています。
画像検査(X線・超音波)
基礎疾患(腫瘍、感染症など)がないか確認。
■ 治療
IMHAは命に関わるため、すぐに治療を開始する必要があります。
治療の柱は以下の通りです。
① 免疫を抑える治療(免疫抑制療法)
まず「赤血球を壊している免疫反応を止める」ことが最優先。
・第一選択:ステロイド(プレドニゾロン)
症状や血液値が改善すれば、徐々に減量していきます。
・状態によって二つ目の免疫抑制薬を追加
ステロイドの副作用が強い・重症・貧血が改善しない場合などは
以下の薬が併用されることがあります。
・アザチオプリン
・シクロスポリン
・ミコフェノール酸モフェチル
・レフルノミド
② 血栓の予防(とても重要!)
IMHAの犬の多くは 血栓(とくに肺血栓塞栓症)を起こすリスクが高いと報告されています。
そのため、多くのケースで血栓予防の薬(抗凝固薬)が使われます。
・ヘパリン
・低分子量ヘパリン
・クロピドグレル
など、症例に応じて選択。
③ 貧血による酸素不足の改善(輸血)
赤血球が壊れてしまうため、
必要に応じて 赤血球濃厚液(pRBC)の輸血を行います。
④ 補助治療
・胃薬
・抗生剤(必要時)
・輸液
・低蛋白血症やDIC(播種性血管内凝固)の管理
など、状態に応じて追加されます。
■ 治療期間と経過
・改善には数日〜数週間
・免疫抑制薬の継続は通常 数か月以上
・血液検査で貧血・炎症・副作用などを定期確認
急激に悪化することがあるため、
最初の1〜2週間は特に慎重な経過観察が必要です。
■ 予後(どのくらい良くなる?)
・文献では死亡率は約50%とされ、重い病気です。
・早期診断・早期治療で助かる確率が上がる
・再発するケースもある
治療がうまく進めば、長期的に安定した生活を送れる子も多くいます。
■ 飼い主さんができること
・ぐったり・黄疸・赤い尿などに気づいたらすぐ受診
・指示通りにお薬を継続
・通院での血液検査を守る
・呼吸が苦しそう、ふらつくなどの「緊急サイン」はすぐに連絡
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