短頭種気道症候群(軟口蓋過長症)とは?|手術をおこなった、3歳のフレンチブルさん
2025.07.29
はじめに
「寝ているときのいびきが大きい」
「暑くなるとすぐに呼吸が荒くなって苦しそう…」
そんなお悩みをよく伺います。
短頭種のわんちゃんに多い「短頭種気道症候群」は、日常生活や命に関わることもある重要な病気です。
今回は、実際に当院で手術を受けたフレンチブルドッグさんの症例をもとに、この病気について詳しくご紹介します。
症例紹介|3歳のフレンチブルドッグさん(女の子)

- 犬種:フレンチブルドッグ
- 性別:女の子
- 年齢:3歳
- 診断名:軟口蓋過長症(短頭種気道症候群の一つ)
🩺 来院のきっかけ
夏になると、呼吸が荒くなりやすく、軽度の熱中症のような症状が出るようになっていました。
また、寝ているときのいびきも大きく、飼い主さまは「このままで大丈夫なのか」と不安を抱えていらっしゃいました。
今回、小動物外科学専門医の先生に来てもらい、手術を行いました。
実施した治療
- 診断:軟口蓋過長症
- 治療内容:軟口蓋切除術(気道確保のための整復手術)
術後経過
- 術後の呼吸状態は安定
- 以前に比べて夜間のいびきがほとんどなくなり、寝ているときも静かになったとのこと
- 食欲・元気も良好
短頭種気道症候群とは?
パグやフレンチブル、ボストンテリアなどの「短頭種」は、
鼻がつぶれたような構造のため、もともと呼吸器に負担がかかりやすい体のつくりです。
この気道に関する問題をまとめて**「短頭種気道症候群」**と呼び、主に次のような病態が含まれます:
- 軟口蓋過長症(のど奥の軟口蓋が長く、空気の通り道をふさいでしまう)
- 外鼻孔狭窄(鼻の穴が狭く、空気が通りにくい)
- 喉頭小嚢の外反
- 気管低形成(特に小型犬種に多い)
よくある症状
- 寝ているときのいびき
- 暑いとすぐ呼吸が荒くなる
- 舌の色が紫っぽい(チアノーゼ)
- 散歩中にすぐ疲れる、しゃがみこむ
- 興奮や熱中症で倒れることも
特に夏場や肥満傾向の子は、命に関わる症状を起こすこともあります。
治療について
- 軽症では生活管理(温度管理・体重管理)で様子を見ることもあります
- 中等度以上、または症状が生活に影響している場合は手術が推奨されます
- 今回は、小動物外科学専門医の先生に来ていただき、手術を行いました。
アビス動物病院からひとこと
短頭種気道症候群は、手術によってQOL(生活の質)を大きく改善できる病気です。
呼吸が静かになり、日常生活がぐっと楽になるケースも多くあります。
「うちの子、寝ているときのいびきが気になる…」
「夏になると苦しそう…」
そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
早めの対処が、安心して一緒に過ごせる未来につながります。
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