子宮蓄膿症 ~病気のサインに気付いてあげて~[2013.06.26]
今回お話しする病気は、子宮蓄膿症という病気です。
手遅れになると命に関わることがある病気ですので、大事なのは『いかに早く子宮蓄膿症に気付いてあげられるか』です。
この病気は、避妊手術をしていない、比較的高齢のワンちゃん・ネコちゃんにおこります。
高齢になり性ホルモンのバランスが崩れやすくなると、生理終了後1~2ヶ月頃に子宮の中の免疫力が落ちるため、細菌が侵入しやすくなります。
この細菌が繁殖していくと、子宮に膿(うみ)が貯まっていきます。最初のうちは子宮の中だけの変化ですので、症状はあまり見られません。
しかし、膿の量が増えていくと、その子によって2つのタイプに分かれます。
①開放性
子宮に貯まった膿が陰部から少しずつ、または大量に出てきます。多くは黄色いドロッとした液体で、時々赤い血液を混じることがあります。
この症状は比較的分かりやすく、オーナー様もすぐに気付くことが多いですが、もちろん放っておけば悪くなってしまいますので、異常に気付いたらすぐに病院で診察を受けた方がよいでしょう。
②閉塞性
こちらが、重症になりやすいタイプです。 子宮に貯まった膿の逃げ場がないため、膿の中の細菌や、その細菌が出す毒素が少しずつ体中に広がっていきます。
最初は症状があまりはっきりせず、少し元気がない、食欲はあるが元気に食べない、といった症状の場合が多いです。特に高齢の子では『年のせいかも』と、発見が遅れることが多いです。
菌や毒素が全身に広がっていくと発熱、激しい吐きや下痢といった症状がみられ、元気・食欲もどんどんなくなっていきます。
また、毒素の影響でお水をたくさん飲む傾向があるため、多飲多尿(水をたくさん飲み、たくさんおしっこをすること)も見られることがあります。
更にひどくなると、全身の臓器へのダメージから『多臓器不全』に、細菌に体負けてしまい、身を守る細胞が激減する『敗血症』などになってしまう危険があります。 また子宮がお腹の中で破裂してしまうと、『急性腹膜炎』を起こしてしまいます。
これらの状況になってしまうと危険な状態ですので、処置が間に合わなくなってしまうことが多くなります。
治療法は、膿の貯まった子宮を取り除くことです。つまり、完治させるのに手術が必要になるのです。
病気の発見時の状態が悪いほど、麻酔のリスクが上がったり、本人の体力・回復力が低下しているため、早くに気付いて治療することが大事になります。
子宮蓄膿症に気付くためのサインは
①発生条件と時期
②健康に見えているときの小さな症状、仕草
です。
①は避妊手術をしていない高齢のワンちゃん・ネコちゃんの、生理が終わってから2か月以内は注意が必要です。 発生する年齢はまちまちですが、5,6歳でも起こっています。 特に生理がいつもより長引いている時などはリスクが高いとも言われています。
②は、生理が終わっているのに陰部周りが腫れている、いつもより長く陰部周りを気にしてなめている、など元気だけどいつもと違う仕草が見られたり、①の条件のいずれかに当てはまる中で、元気消失、嘔吐、下痢、多飲多尿などが見られる場合は、念のためすぐに病院で診てもらってください。
その際はレントゲン検査や超音波検査ですぐに診断ができます。早いうちに対処すれば、決して怖い病気ではありません。
当院では、診断・検査はもちろんですが、子宮蓄膿症の手術も対応しております。少しでも怪しい症状、様子があれば、いつでもご相談下さい。
また、子宮蓄膿症は避妊手術をおこなっておくことで予防することができます。この病気の事だけでも避妊手術を行うメリットが高いと思いますので、避妊手術も考えていただくとよいかと思います。 避妊手術についてのご相談もお気軽にお問い合わせ下さい。
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